宅建士の仕事は、単に不動産物件の売買や賃貸の仲介をすることだけではありません。
時には、不動産物件の所有者であるオーナーから物件の有効活用を相談される事もあります。
住宅用物件の有効利用の方法として、最近話題になっているのが民泊です。
日本にエアビー(Airbnb)が進出してから、住宅を民泊用に貸し出す事例が急速に増えました。
業者に限らず、一般の人もAirbnbなどの仲介サイトを通じて、家の中の部屋の一部を宿泊するゲストに貸し出しています。
過熱する民泊ブームのなかでトラブル防止のために2018年度には「民泊新法」が定められました。
今後、宅建士にも民泊対応の物件についての相談が増えてくると予測できます。
今回の「宅建士の仕事」は、民泊についての記事です。
マンションやアパートのオーナーだけでなく、一般顧客からも住宅物件の新たな活用法として注目を集める民泊住宅の現状や将来性に迫ってみます。
日本で認められている民泊の定義とは
民泊とは
旅行者などが、一般の民家に宿泊することを一般的に意味する日本語の表現で、特に、宿泊者が対価を支払う場合に用いられる。
日本の法律では「住宅宿泊」などと呼ばれ、住宅宿泊事業法を含む観光政策の用語として「民泊サービス」も使われている
(引用:Wikipedia「民泊より)
「宿泊料を徴収し、反復継続して提供」する場合は、旅館業法の適用を受けます。
日本では、ホテルや旅館業のように簡易宿所営業の許可が必要となります。
住宅(戸建住宅やマンション)などに人を宿泊させてお金を貰う「民泊」に対して、かねてから法律違反ではないかと指摘されていました。
旅館業法の特例で民泊が認められた「特区民泊」以外は、違法になるかどうかのグレーゾーンでした。
よって、2018年6月に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)では、届出のない違法民泊は、営業が認められないことになりました。
2018年6月15日に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)は、一定の基準を満たす住宅について、届出手続を行うだけで民泊営業を開始することを認めるものであり、個人が、簡単な手続により、空き家や空き室等の遊休資産を活用して民泊を合法的に行うことを可能
(引用:Airbnbnaviより)
この一定の基準を満たした住宅の条件は、簡易宿所営業の許可ほどは厳しくありません。
宿泊する住居内には、宿泊者が使える水回り設備(台所、浴室、便所及び洗面)が設置されていることなどが条件になります。
他に地域ごとに個別に定められたルール「自治体規制」に適応する義務があります。
「民泊新法」によって違法のグレーゾーンだった民泊は事実上、日本で合法化されました。
しかし、その反面、届出がない違法な民泊は排除されることになります。
(引用画像:国土交通省「住宅宿泊事業法案」より抜粋)
「民泊新法制定」後の民泊市場の動向
2018年度12月の日経の記事では、新法制定後から民泊市場は、違法物件が減り正常化へ向かっています。
しかし、約半年経ちましたが、民泊全体の稼働率は前年割れが目立ちます。
下記は、日本経済新聞(2018年12月)に掲載された記事の画像です。
(引用画像:「日本経済新聞」2018年12月12日より)
民泊にとっては良いニュースもあります。
日本人の利用は伸びています。
新法制定後8月〜9月に民泊施設を使った日本人は、その前の6月〜7月に比べて3.5倍に増加しています。
また、安定した民泊定着の兆しもあります。
高級路線の民泊で売る古民家は数ヶ月以上先の予約も埋まっています。
記事を読んで感じるのは、民泊も質の時代に入ったことです。
これから適法に宿泊者に良質なサービスを提供する民泊であれば、宿泊者は安定して伸び続けると予測できます。
違法民泊が排除されることで、安心感も増すので一時的に届出業者や一部の施設で利用者が減ることは、悪い事ばかりではありません。
民泊の利用は首都圏に偏る
民泊の動向で、特徴的なことが民泊の届出が、東京都を中心に偏っていることです。
下記の記事も同時期の2018年の12月に掲載された記事です。
(引用画像:「日本経済新聞」2018年12月14日より)
民泊の届出件数は、東京都が全国の中でも断トツに多いです。
1位【東京】4010件の物件数は2位【北海道】1622件よりも約2.5倍近くになります。
首都圏では、外国人に人気の街「新宿」や「渋谷」などが上位を占めます。
【大阪】や【京都】も観光客が多いですが、民泊物件が不足していることもあるようで、届出数は1位、2位ではありません。
特に京都では、「自治体規制」が厳しく、観光客増加による近隣住民のクレームも多いので、最近は新たな民泊も認可されるまで厳しいようです。
そして、魅力的な観光施設がある地域は、民泊施設を引き寄せやすいです。
これから観光地で有名な3都県以外の地方へ、いかに外国人観光客を引き寄せるかという課題にも民泊はリンクしているようです。
宅建士は民泊住宅をすすめても良いか?
以上、最近の民泊事業について動向を説明しました。
住宅を民泊用に新築または改装することをオーナーから相談された時は、宅建士はどうアドバイスすればよいか?
この問いは、需要と供給のバランスも把握する必要があります。
なぜならば、せっかく民泊用に住宅を造っても、肝心の宿泊者が来ないと意味がないからです。
例えば、住宅が観光客を多く惹きつける立地にあるならば、「自治体規制」にも適応できそうであれば、おすすめできます。
ただ、観光客にそれほど人気がない地域であれば、費用対効果を冷静に考える必要があります。
オーナーが外国人観光客や日本人旅行者をもてなしたい、交流したいなどの目的がないと、売り上げが無いと続けるのが苦しくなります。
民泊もこれからライバルが増えてきます。
自分の提供する宿に魅力が無ければ、選ばれる民泊にはなりにくいです。
次の記事では、「宿泊者を惹きつける民泊用住宅」とはどういうものか?についても考えていきたいです。
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