宅建士の仕事の中に新築住宅の販売や仲介があります。
営業の仕事をする宅建士であっても、顧客に売りやすい新築住宅の知識は必要です。
今回の「宅建士の仕事」は、そんな売れる住宅物件のミニ知識についてです。
少子高齢化社会になりつつある日本では、これからの新築住宅市場は、苦戦すると予測されています。
その問題に対して、ハウスメーカーをはじめ建築業者や不動産販売業者は、売れる新築住宅の開発に凌ぎを削っています。
そして近年、注目されつつある新築住宅が、高機能な省エネタイプの住宅です。
東日本大震災の後に起こった電力不足の問題は、住宅市場にも大きな影響を与えました。
結果、自然エネルギーを有効活用する太陽光発電システムなどの活用に、消費者の関心が高まりました。
現在、経済産業省を中心にZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及を国が後押ししています。
経済産業省は、2016年度からZEHビルダー(ZEH住宅を建てる業者)の登録を開始しました。
2020年度までには、ハススメーカーなどの業者が建築する戸建住宅の過半数をZEHにする目標を立てています。
そして、2030年度までに標準的な新築住宅が、ほぼ全てZEH仕様になる社会の実現を目指しています。
これらの動きは、建築業界だけでなく、今後の宅建士の仕事にも大きく関わってきます。
政府が後押しする省エネタイプの住宅が普及すれば、不動産を販売や仲介する時にその価値を顧客に説明する必要があるからです。
また自社で開発した住宅物件を販売する場合は、土地購入の段階で、顧客から建物の相談を受けることもあります。
このZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)が実際に顧客に売れているのか?
詳しく見ていきましょう。
ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは
まず、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、今までの住宅とどこが違うのでしょうか?
ZEHとは、「年間で消費する一次エネルギーの消費量をゼロにする」また、「住む人に快適な住環境を提供」を提供してくれる住宅の事です。
「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」
(引用画像:経済産業省「資源エネルギー庁」より)
一次エネルギーとは、(太陽光、水力、風力)など自然界から得られるエネルギーの事です。
高断熱でエネルギーを極力必要としません。
高機能な設備によって効率よく使い、また創り出し省エネを実現させているのがZEH(ゼッチ)です。
(引用画像:経済産業省「資源エネルギー庁」より)
下記の建材や設備が、よく住宅に取り入れられています。
・高断熱と高気密を実現させる断熱材やサッシなどの建材の利用
・高効率の給湯器などの設備
・太陽光発電システム
・省エネ換気設備
(引用画像:経済産業省「資源エネルギー庁」より)
ZEHには3種類の補助金制度がある
政府の肝いりで、普及を後押しするために補助金制度が設けられています。
主に3種類の補助金制度が利用できます。
・ZEH支援事業
・ZEH+実証事業
・先進的再エネ熱等導入支援事業
これらの補助金を申請するには、下記の団体が認定する幾つかの条件をクリアする必要があります。
一般社団法人 環境共創イニシアチブ
Sustainable open Innovation Initiative(略称:SII)
公式サイト:https://sii.or.jp
また、ZEHビルダーの登録業者でなければ、ZHE仕様の住宅を建てることができません。
平成30年1月では、6,303社がZEHビルダー登録を行っています。
一般の購入者は、ZEH仕様の住宅が建てられる業者を自由に選択できます。
ZEHビルダーに登録している全国のハウスメーカー、工務店などを検索できます。
検索先:「SII一般社団法人 環境共創イニシアチブ」
このSIIでは、各ZEHビルダー/プランナーが実績報告書を提出した時の内容に基づき、評価をしています。
評価実績が高い業者ほど、ZEHの住宅に手慣れた施工業者であると判断できます。
また、ZEHビルダーは補助金申請の相談にも対応しています。
ZEHが住宅市場で普及しない現状と理由
ZEHの導入に向けて、2015年度から国、民間業者や業界団体が普及活動に取り組んでいます。
それぞれが予算を使って情報発信や補助事業を行っています。
(引用画像:「ZEH普及に向けたロードマップ」経済産業省より)
しかし、建築業界などの関係者に周知していても「制度が分かりにくい」という声が、現場から多く聞かれます。
また下記の理由から現実は、ZEHの導入があまり進んでいません。
・予算の壁がある。
・ZEHのニーズが少ない。
・情報収集がしにくい。一般に浸透していない。
省エネ対応の住宅は、将来の利便性や経済性を考えると導入に前向きな購入者はいます。
しかし、全体の施工予算価格が高くなるので、実際の購入には気が進まない人が多いです。
また、ZEHのニーズが少ないという事は、そこまでの必要性を感じていない事でもあります。
現状、いままでの住宅で十分生活できていたのだから、なぜ、わざわざ予算を新たにかける必要があるのかという感覚です。
また、太陽光発電なども全ての家庭が導入できるわけではありません。
太陽光パネルを設置する場所の問題もあります。
さらに十分な日照が確保できないエリアや地域は、効果が上がらない事があります。
制度もまだ新しいことから、ZEHの知名度も低いです。
業者から説明されるまで、補助金制度も知らない顧客がほとんどです。
現実は、ZEH対応だから住宅販売の営業で、売りやすいなどの事はあまり聞きません。
ZEH仕様の新築住宅の売り方
幾人かの建築業者の話では、ZEHは住宅プランの相談中に顧客に急に提案しても、まず拒否されるそうです。
いきなり施主に話をしても、売り込みをしているとしか思われないので、省エネの良さが通じないです。
しかし、ZEH対応の注文住宅で売上を上げて成功している業者もいます。
そんな業者の提案のポイントは、「エネルギー問題」として話をしていることです。
また、節電ができ数年後には得になるなど、費用対効果の説明も必要です。
論理的に将来のランニングコストのメリットから先に話す方が受け入れやすいそうです。
家づくりでも住宅づくりではなく、エネルギー問題に分類しまうと施主は、家とは別予算として考えます。
また、売れる業者は、機能面だけでなく将来の生活環境に対応できる提案も重視しています。
住まい手の生涯を考えて、住みやすく快適な住環境を整えることは大切です。
電力供給不足などの将来起こる可能性のあるリスク回避の1つの手段としてアピールするのもコツです。
以上の事を試してみると、導入に予算が無いという人も関心を持ってくれることがあります。
必要と感じる物には、多少予算をオーバーしても支払う人は多いので、案外売れる場合があります。
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