一級建築士と二級建築士は取得していれば転職には有利な資格である事は間違いありません。
しかし、資格を持っているというだけで年収が上がり成功する訳ではありません。
人手不足もあり最近の世の中では転職は奨励されています。私の周囲でも20代で転職する二級建築士は多いです。
しかし、色々な事例をみていると転職でキャリア構築に失敗している残念な人もいます。
今回は、私の経験と周囲で見てきた20代の若い二級建築士達の転職成功のコツと失敗しないキャリア構築の方法について、リアルな業界事情を本音でお伝えしていきます。
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20代の二級建築士の転職
建築業界では技術職(設計士、積算、工事現場の監督、職人、研究者など)の就業者が多いです。
もし、これらの職種でキャリアアップを目指す場合は、特に下記の様な厳しい現実を自覚して転職活動に臨む方が良いです。
20代で経験する会社で将来のキャリアが決まる2つの理由
現在の人手不足の日本の建築業界では、20代である事だけで転職は有利です。
しかし、20代の転職で特に気を付けておきたい事は、次の転職先がキャリアアップしていける技能を身につけられる環境であるかどうか?です。
日本企業であれば、20代は会社から育てて貰える本当にありがたい時期です。
この仕事を覚えるには絶好のチャンスを逃しては駄目です。
特に技術系の専門スキルを伸ばしていきたい場合は、
20代で経験した会社のレベルで、その後の自分のキャリアが決まると言っても過言ではありません。
仕事を覚える20代の過ごし方が特に重要であり、その後のキャリアが決まる理由は2つあります。
良い会社に就職できると成功する為に必要な下記の重要な2つを得られます。
①「スキルが身につく」
②「人脈が広げられる」
①「スキルが身につく」の逆を言えば、
もし自分が技術を覚えていく会社の仕事レベルが低ければ、その程度の仕事レベルの技能しか身につかないシビアな現実があります。
一般に上場している大手建設、建築企業、また有名設計事務所(日建設計など大規模な組織事務所も含む)などが人気なのは企業のネームバリューだけではありません。
その様な企業に依頼されるプロジェクトは、レベルが高く利益率の良い一流の仕事が集中しているからです。
建築の様に物を造る仕事は特に予算などの条件、知名度など手がけた物件のランクによって仕事のレベルに、はっきり差がつきます。
一流の良い仕事ができる環境には、当然、人よりも仕事が出来るレベルの高い人達が集まり、人材が豊富です。
自分が仕事を教わる先輩達のレベルが高ければ高い程、若いうちは吸収できる事も多くなり実力も早く上がります。
②「人脈が広げられる」は将来の種蒔きとして重要な事です。
自分が付き合う仕事の人脈も環境によって大きく差がつきます。
レベルの高い仕事環境では良い人に出会える確率も圧倒的に高いです。
それは同時に自分の将来のチャンスを広げる事にも繋がります。
将来30代や40代で自分がキャリアップの為に転職、場合によれば独立するにしても、前職の会社のレベルが高いほど、実力者達との人脈と繋がりがあればある程、有利になります。
よって20代で転職する会社は、スキルと人脈の両方が得られる場所を選ぶ必要があります。
どこにでも通用する高いレベルの仕事を覚えられる環境かどうか?を最優先にして決めて下さい。
レベルの高い環境であれば良い仕事の人脈も自然に広がります。
もし、あなたが今、在職中の会社がキャリアアップに最適な環境であれば、たとえ労働条件がキツイなどの問題があっても、経験を積むまでは転職せずに我慢した方が良いです。
20代の二級建築士のリアルな建築業界の求人事情
20代半までの年齢であれば、大学の建築学部卒、または2級建築士を取得しているだけでも、人手不足が続く建築業界の転職市場では、かなり有利になります。
また、建築士の資格や建築の経験が無くても 未経験者歓迎の求人であれば、20代前半は熱意さえアピールすれば人柄だけで採用されやすい唯一の時期です。
しかし、20代半を過ぎ30歳間近になると売りが無い未経験者は段々と厳しくなります。
年齢が高くなれば、二級建築士も資格だけ取得すれば良いのではなく、建築関係の実務経験を数年間している事が転職成功の条件になります。
特に応募者が多い人気の大手や優良企業の採用では、実務経験者の応募者に比べると資格しか無い人は実務経験で負けるので採用が難しくなります。
ただ20代であれば、建築以外の異業種からの転職であっても、前職の職歴が高く評価されるものであれば、激戦の人気の企業であってもポテンシャル採用になる可能性はあります。
しかし、技術者枠の採用は28歳を過ぎると全くの未経験者は、人気企業でなくても書類選考の通過から厳しくなります。
技術職の建築士は通常5年~10年以上をかけて1人前の専門家に育ちます。
仮に20代後半から設計事務所で見習いをしたいと希望しても、料理人の修行と同じで、早くから始めないと見習いには、もう遅いと入社を断わられる事例も少なくありません。
確かに年齢の高い未経験者の入社は本当に無理かどうか?は自分のやる気次第です。
30歳でも未経験から建築の仕事をしたい場合でも、熱意次第で採用してくれる会社も中にはあります。
しかし転職市場では不利である事は間違いありません。
一般的に30歳前後は、学校を卒業後で社会経験を積み、そろそろ自分の進む道は固まってくる頃です。
わざわざスタート地点で遅れを取るキャリア構築よりも、今迄の自分の経歴を活かせる仕事を探す方が良い場合もあるのも事実です。
30歳間近になってから、建築の技術職を全くの未経験から目指すのは、キャリア構築の上からも楽ではないです。
私も異業種から建築業界に入りキャリア構築には苦労し失敗した経験もあるので、20代後半からの未経験者から相談される時は、お薦めはできないと現実の厳しさは伝えています。
しかし、たった一度きりの人生です。
厳しさを理解した上で、それでもチェレンジしたい人は、挑戦する方が後悔しない事も私は経験からよく理解しています。
転職サイトも上手に利用すれば、自分のキャリアを見つめ直すのに良い機会になります。
(参考記事:「20代におすすめの転職サイトを紹介!転職活動で失敗しないコツとは?!」)
20代の転職で入社しない方がよい、キャリアを駄目にする会社とは?
20代の転職で1番に避けたいのは、世間で通用するスキルが身につかないブラック会社への就職です。
そんな会社は1ヶ月以内に直ぐに辞めれば、20代は若いので30代や40代に比べれば、次の転職先も見つけやすく何とかなる年代です。
しかし転職活動は失敗しないで済むならば、しない方が良いです。
そして、若い年代が特にひっかかりやすいのは、明らかなブラック企業では無いが、仕事がグレーゾーンの会社です。
うっかり入社して辞める決心がつかないまま長居してしまうとキャリア構築に失敗します。
下記の記事に続く曖昧なイメージ先行の求人には、特に気をつける必要があります。
20代の転職は騙されやすい!曖昧な言葉の求人には要注意
これは実際に出ていた求人事例です。
カタカナ文字にすれば、同じ仕事でも伝わるイメージも良くなります。
・ハウスメンテナンスアドバイザー → 白アリ駆除の営業
・ハウジングプランナー → 住宅営業
はっきりと何をする〇〇仕事だと、具体的に業務内容を明記していない仕事の求人は特に要注意です。
「アドバイザー」や「プランナー」という職種は、デザインやプランニングを任せてもらえると思いがちですが、実際の業務の半分以上は営業職の仕事である場合もあります。
さらに会社の業種にも注意が必要です。下記の様な事例もあります。
業種が「商社」と「環境ビジネス」の場合
・住宅関連の資材を扱うと全て「商社」
・リフォームで環境改善につながるから「環境ビジネス」
会社の業務内容の紹介に「商社」や「環境」の言葉があれば、夢や将来性がありそうです。
しかし実際は会社概要に明記されているだけで、その分野の業務は本業とほとんど関わりがない場合もあります。
この様な求人を出す全ての企業がブラック企業であるとは断言はできません。
厳密に定義すると、少しでも本業に関連すれば、求人の表記方法は広告違反ではありません。
しかし、自分が本来やりたかった分野の仕事内容を選ばないと、結局は何の為に転職したのか?意味がなくなります。
グレーゾーンの表示をする様な会社で、本当にどこでも通用する技術スキルが身につくのか?
この部分はしっかりと見極め判断して入社する必要があります。
図面修正、トレースなどの重労働は何年もすべきでない理由
経営者や第一線でスペシャリストとして活躍している人達は、若い頃の重労働を否定する人はほとんど居ないです。
なぜならば、身を粉にして働く時期を経験していないと秀でた仕事のスキルは身につかないし、人並みの努力では、人よりも抜きん出た成功ができないからです。
しかし成功する為には、若い頃は特に注意して仕事を選ぶ必要があります。
・今する努力は、将来の自分の糧になる努力をする
よくあるのは、深夜まで残業続きの設計業務の仕事を3年以上も続けているケースです。
頑張っていた割には、簡単な図面修正やトレースレベルのスキルしか身についていない事です。
この様な実務経験は長時間労働などで苦労していたとしても損なキャリアの積み方です。
転職市場では単純労働に近い技術力の評価は低いからです。
同じ設計業務を数年間経験するのでも、設計図面を一から設計する様な実務経験を積んだ人に比べれば、明白にスキルの差がついています。
次にスキルアップの転職をするにしても図面修正やCADオペレーターだけだと、結局はアシスタント業務しかありません。
30代以上のアシスタント業務の求人は激減する
若い間は、それでも次の転職先はありますが、もし30歳を過ぎてもアシスタント業務レベルの経験しかないのであれば、求人の選択肢が大幅に減り、転職も苦労します。
また当然、次の転職先の年収アップも期待できません。
年収アップができる人は、高レベルの仕事ができると判断されるので給料も上がります。
アシスタント業務では、誰でも出来る仕事なので転職で高い評価を得る事はできません。
アシスタント業務を始める時に注意すること
仕事を始めたばかりで何も出来ない時期は、下積みのアシスタント業務で多少の条件の悪さも我慢する事は大切です。(身体を壊すのは論外ですが)
しかし、3年以上経っても自分に任せられる仕事のレベルが上がらないのであれば、その後のキャリア構築を考えると問題です。
会社によってはスキルアップできる仕事自体が社内に無い場合もあります。
例えば、「同じパターンの仕事を受注し続けている」、「分業化された一部の仕事しかやれない環境である」などです。
この様な会社の場合は、自分一人だけが努力しても直ぐに会社の環境は変わりません。
他に魅力が無ければ、長く勤める会社ではありません。
例えば
・ワークライフバランスが可能で、仕事以外の自分の自由な時間が多く取れる。
・残業が多くても他社よりも給料が高いので貯金が出来る。
上記のメリットがあれば、続ける価値はあるかもしれません。
そうでないならば、将来のビジョンは見えてくるでしょうか?
まとめ:20代の転職で失敗しないキャリア構築とは
社会経験が少ない若い人は、最初に入社した会社の環境が悪くても他の会社を知らないので、それが当たり前だと思いがちです。
しかし同じ仕事の努力をするならば、自分の将来も考えながらキャリア構築をして下さい。
安月給で、深夜までスキルアップしない仕事ばかり何年も続けていても、決して年収もスキルも上がりません。
都合よく使われて結局は自分の人生を消耗する社畜で終わってしまいます。
自分の将来を真剣に考えて、選択していく勇気を持つことで人生が開けていくと思います。
悩む20代の建築士や技術者の方が、良いキャリア構築ができる事をお祈りしています。
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