不動産の仕事:空き家住宅の売り方と処分方法を相談されたら?

今回の話題は、日本の少子高齢化社会で深刻な問題になっている空き家の住宅についてです。

 

不動産流通機構では、約537万件の新規物件(平成29年度)が登録されました。

しかし、前年比 1.9%減と不動産の全体の流通取引件数は減っています。

【内訳】

売り物件 1,607,995 件(前年比 2.7%減)

賃貸物件 3,761,846 件(前年比 1.6%減)

(参照:「平成 28 年分指定流通機構の活用状況について」より)

不動産取引の登録件数が減る事は、不動産業界の停滞を意味します。

 

その代わりに近年増加しているのが、空き家です。

空き家の総数は、20年間で1.8倍 (448万戸→820万戸)にも増加しました。

(参照:「平成25年度:住宅・土地統計調査(総務省)」より)

 

現在の空き家が不動産全体に占める割合は13.5%にもなります。

さらに2033年の総住宅数は、約7130万戸に増えるとも言われています。

 

現在の空き家数、約820万戸から約2170万戸と2倍以上に増えるのです。

 

空き家率は現在の13.5%から2033年度の将来は、30.4%に上昇。

約3軒に1軒が空き家になります。

(野村総合研究所(NRI)の発表より)

 

これから宅建士の仕事は、空き家住宅とは無関係ではいられなくなります。

顧客から処分方法を相談される事も増えます。

 

本文では、空き家の現状を把握して、空き家の住宅の売り方を考えてみましょう。

空き家の住宅とは

まず、空き家住宅とは、どのような状態をいうのでしょうか?

【空き家の定義】

「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。

ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。(2条1項)

 

(引用:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26 年法律第127 号)の概要」より)

居住されず、人の出入りが無い時期が1年以上になる住宅を一般的に「空き家」と呼びます。

 

水道・電気・ガスの使用状況などから総合的に見て「空き家」かどうか判断するようです。

(参照記事:「NPO法人 空家・空地管理センター」より)

 

空き家にする気はなくても、家を何年間も放置していると空き家と判断されてしまう場合があるので注意です。

「賃貸用の住宅」と「一戸建住宅」の空き家が多い

空き家には、大きく「売却用」、「賃貸用」、「二次的住宅(別荘など)」、「その他」の4種類に分けられます。

下記が空き家の種類別の内訳です。

宅建士の仕事:空き家の種類別内訳

(引用画像:国土交通省「空き家の現状」より)

 

空き家の半分以上を賃貸用の住宅が占めます。

住宅の供給量に対して賃貸住宅を借りる人が減ってくると、空き家が増えると推測できます。

 

そして、最も深刻なものが「その他の住宅」に分類される空き家です。

売却も賃貸の予定もなく、二次的利用もない目的なく放置状態の空き家です。

 

そのような空き家は、再利用しようにも老朽化が進み、処分に困る住宅である場合もあります。

このような「その他の住宅」(318万戸)は、空き家全体の約39%を占めます。

 

そして、「その他の住宅」の内訳では、

一戸建(木造)」(220万戸)が最も多いです。

空き家が増加する理由

一戸建てを中心に空き家が、近年増加している最大の理由は、日本が少子高齢化社会を迎えたことにあります。

 

高度成長期には、郊外にも一戸建てを建てることが流行りました。

この頃は経済も右肩上がりで、将来も日本の人口は増え続けると明るい見通しでした。

 

しかし現在は、出産適齢期の若い世代の人口は減り続けています。

親世代の戸建住宅があっても、そこに住まない子世代が増えてきました。

その結果、かつて大量供給され続けてきた住宅が余る現象が出てきました。

 

また、建築基準法などの法改正で、新しい法改正に適用できない中古住宅も増えました。

そのような住宅は価値が下がり、新法令に適用させるためには、多額の建て替え費用がかかる場合もあります。

売却しようにも売れない状態の老朽化した住宅が、地方を中心に残る状態になりました。

 

更に所有者が、積極的に空き家を処分したがらない理由は税制にもありました。

平成27年度には撤廃された「住宅用地の特例」です。

 

従来の法律では、建物が建っている状態でなければ、固定資産税などの優遇措置が取られませんでした。

税金が高くなるので、更地に戻すのを嫌がる所有者が多い状態でした。

さらに土地を更地に戻すのは、空き家の解体費用がかかります。

 

上記の結果、使わない中古住宅をそのまま空き家として残す人が増えました。

空き家のリスクと所有者の義務

建物の耐用年数を超えた老朽化した空き家は、倒壊などの危険性があります。

また、植栽や雑草の手入れの不備から街の景観の悪化を招くなど、街の資産価値を下げます

 

防犯や防災の面からみても空き家は危険性が高いです。

 

空き家は自分達の問題だけでなく、周辺住民に迷惑をかける社会問題になっています。

管理状態の悪い空き家は、自治体より空き家の適正管理をするように勧告を受けます。

 

それでも所有者が勧告を無視して、空き家の状態が改善されない場合は、行政代執行の処置が取られる場合もあります。

(「行政代執行」とは、所有者に変わって行政が建物の取り壊しを行うこと)

 

また、所有者は空き家のために、無駄に税金を払い続けることにもなります。

誰も使っていない空き家であっても所有し続けるだけで、下記の税金がかかります。

・固定資産税

都市計画税(空き家が市街地区域内にある場合)

 

平成27年度まで適用された「住宅用地の特例」という制度では、空き家であれば固定資産税が軽減される優遇措置がありました。

しかし、特定空家等への適用は撤廃されました。

 

住宅用地に対する固定資産税が最大1/6、都市計画税が最大1/3まで減額されていた優遇措置が廃止されました。

人によっては、従来の6倍の固定資産税を払う義務が生じます。

 

とりあえず空き家でも置いておくという事は出来ない時代になりました。

所有者は、空き家を除去するか再利用するか決断しなければならないです。

空家等対策の特別措置法とは

空き家に対して「空家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されました。

 

この法律は、倒壊の危険があるなどの周辺に迷惑をかける空き家は、「特定空き家」として指定。

各市町村が、空き家の所有者に撤去・修繕などの指導、勧告・命令ができます。

もし、所有者が命令に従わなければ罰金を科し、行政代執行で撤去できます。

 

しかし、この行政代執行は、税金で撤去や解体を行うものなので、一部では税金を使う問題が指摘されています。

 

実際に命令は出ても行政代執行まで進んだ事例は、全国で見ても少ないです。

深刻な状態になっている空き家の数に対して、撤去が全く追いついていない状態です。

(引用画像:国土交通省「空き家の現状」より)

 

この法令は効果は特になく、空き家が劇的に減るという事は当面はなさそうです。

宅建士の仕事:空き家の住宅の売り方

住宅の空き家問題が、日本全国で進んでいることがわかります。

 

では、宅建士が空き家の処分に困る所有者から相談を受けた場合は、どうすれば良いのでしょうか?

まずは、空き家住宅への支援策をみていきましょう。

空き家対策で利用できる支援

空き家の処分を考える時に、その地域の支援策を調べてみてください。

国や地方公共団体がすすめている空き家対策の支援を利用すると補助が受けられます。

空き家の補助金や支援制度

下記が、空き家の住宅が受けられる主な支援内容です。

・改修費補助(立上り期に国の直接補助あり)

・家賃低廉化補助・改修費融資(住宅金融支援機構)

・家賃債務 保証料補助

・リフォーム事業者との連携による移住希望者向けリフォーム提案。

・空き家化を未然に防ぐための遠隔地居住者向け相続不動産相談。

(引用:国土交通省「空き家の現状」より)

既存の住宅流通市場の活性化のためにも、今後も行政の支援政策は続くと予測できます。

 

このような空き家住宅の支援制度は、全部の空き家が使えるわけではありません。

しかし、有効な支援が受けられれば、空き家の所有者の負担は少しでも軽くなります。

事業活用の支援

また、様々な機関と連携して空き家問題を解決する動きもあります。

市町村ごとに支援制度の内容は変わりますが、官と民間業者が協力して支援事業をすすめています。

 

壊すべきものは除却再利用が可能な住宅は活用していく考え方です。

宅建士の仕事:空き家住宅の活用例

(引用:国土交通省「空き家対策」より)

 

市町村の中には、まちづくり・住まいづくりの取組が進んでいる地域もあります。

ヒントになる事例も見つかるかもしれません。

空き家バンクの活用

国土交通省が後押しする「空き家バンク」に登録する方法もあります。

「空き家バンク」とは、全国の地方自治体が持っている空き家・空き地の情報を集めたサイトです。

 

空き家の所有者と空き家を利用したい人を仲介しています。

【空き家バンクの仕組み】

(公式サイトより「LIFULL HOME’S」より)

 

国土交通省のホームページに情報が掲載されています。

参照先はこちら >>>「全国版空き家・空き地バンク

 

空き家専門の情報サイトなので、空き家を探して利用したい人が閲覧する可能性が高いです。

国土交通省のモデル事業者

下記の2つは国交省が支援する「空き家バンク」のモデル事業者です。

 

【事業者の全国版サイト】

株式会社LIFULL

アットホーム株式会社

空き家バンクは全国で普及しているとは、まだ言えません。

 

平成30年10月22日時点の全国の自治体の都道府県別「全国版空き家・空き地バンク」参加表明率は31.0% ( 557自治体)

 

参加率は3分の1程度です。

(参照:国土交通省     「都道府県別「全国版空き家・空き地バンク」参加表明状況(最新版)」より)

 

しかし、これから普及してくるとも考えられます。

今後、積極的に利用していくと住宅の売り先が見つかるかもしれません。

空き家住宅の再利用方法を提案

空き家を売る方法として、再利用の仕方を提案することも1つの方法です。

 

不便な立地にある空き家であっても、下記のように活用できる事例もあります。

宅建士の仕事:空き家対策と他分野施策との関係

(引用画像:国土交通省「空き家の現状」より)

 

今後、空き家を売る宅建士は、空き家住宅を売る時には、再利用方法を提案できる能力も必要になります。

無論、再利用には解体や建築コストもかかります。

収支計算を計算すると再利用は実現できない場合もあるかもしれません。

 

しかし、街づくり全体を考えて、空き家住宅の再利用まで考えられる宅建士は必要です。

住宅を売る営業側の人間の方が、市場のニーズは掴みやすいです。

 

街の価値を高めてくれる宅建士は、所有者や地域にとってもありがたい存在です。

これからの中古の住宅市場では特に重宝されると思います。

(引用画像:国土交通省「空き家の現状」より)

次回の記事で空き家の再利用方法を考えていきたいです。

 

不動産業界の年収アップに役立つ記事です。

(参考記事:「不動産業界で年収アップしたい人が絶対に身につけるべき3つのスキルとは?」)