宅建の仕事のなかで「登記」についての知識があると、顧客と不動産の売買交渉を進める上でも便利です。
不動産売買の時に、せっかく上手く話がまとまりそうなのに交渉が止まる事があります。
その1つの原因は、「登記」に問題がある場合があります。
その売却対象の不動産(土地や建物)の登記が本人名義でない事や権利関係に争いがある場合などです。
私は一級建築士で、もともとは設計の仕事をしていましたが、現在は、土地の仕入れなど不動産の仕事にも関わっています。
今の仕事で感じるのは、不動産売買には、登記の問題は常について回ることです。
登記手続きは司法書士がするにしても、登記に問題があると売買契約が完了しないからです。
今回は、そんな「登記が困難になる原因」として考えられる事例をまとめて紹介していきます。
宅建試験「権利関係」の「不動産登記法」は、ほぼ毎年出題されています。
試験では、この記事の事例ほどは細かく出題されませんが、「借地権」や「抵当権」など重要な単元の理解を深める上でも「登記」の知識は役立ちます。
また、宅建試験のためだけでなく、不動産売買の時に役立つので読んでみてください。
Contents
「登記済権利書」と「登記識別情報」とは?
不動産の売却手続きには、「登記済権利書」または「登記識別情報」が必要です。
これらは、対象の不動産が自分の持ち物であるという事を証明してくれる物なので大切です。
第三者に対抗するためにも「登記」は必要です。
「登記済権利証」とは、不動産登記が完了時に登記所が登記名義人に交付する権利を証明する権利書のことです。
「登記識別情報」とは、旧不動産登記法の「登記済権利証」の代わりに、新たに登記名義人に対して発行される12桁の符号の事です。
よって上記の2つのいずれかの「登記」ができなければ、不動産は本人の物とは認められないので、物件を売却したくてもできません。
最近の「積水ハウス地面師の詐欺事件」など仮登記が書類偽装で無効になった事例もあります。
(参考記事:宅建士の仕事は詐欺には注意!地面師の積水ハウスの巨額詐取事件を考察)
登記をする事が困難になる理由は多岐にわたりますが、以下、主な原因をみていきましょう。
権利者の確定が不能か困難な場合
登記名義人または相続人等の権利者(登記名義人等)の確定が不能、もしくは困難な場合は、当然、登記はできません。
下記の理由が考えられます。
1)登記名義人等の戸籍、住所が不明のもの
2)登記名義人等が外国人または国外在住者のもの
3)外国人または国外在住者にかかる相続のもの
4)登記名義人等に行方不明者がいる場合
5)共有地等のもの
6)登記名義人が解散法人のもの
7)登記名義人が宗教法人等で名義人の法人登記がなされていないもの
8)土地改良区事業等の事業が完了していないもの
土地改良区事業とは、農業ようにため池や水路を造るなど、農業生産の基盤を整備する事業のことです。
この事業の対象地域になり、事業が完了しない場合は登記をするのが困難になります。
権利関係に争いがある場合
登記の権利に争いがある原因は、下記の4つです。
1)境界に争いがあるもの
2)所有権に争いがあるもの
3)相続人間に争いがあるもの
4)借地権等の権利存否または割合等に争いがあるもの
抵当権等の抹消登記が困難な場合
抵当権等がついている不動産は、抹消手続きが必要ですが、それが下記の場合は困難です。
1)抵当権者等との話し合いが不調なもの
2)抵当権者等が死亡しており、相続人の特定が困難なもの
3)抵当権者等が解散法人のもの
登記簿、公図等の変更・更生が困難な場合
公図(こうず)とは図面のことで、土地の位置や形状を確定する基本情報になります。
法務局に備え付けられ、旧公図であれば明治時代まで遡ります。
1)14条地図等と現地測量の結果が不整合なもの
2)二重譲渡となっており、関係者間で争いがあるもの
「14条地図」とは、公図と同様に法務局で備え付けられている図面のことです。
公図に比べると法14条は方位、形状や縮尺が正確です。
よって、土地を調べる時は「公図」よりも「14条地図」を参考にします。
「地図」の中にある「地番」や「地目」は、税金の徴収を行うために書いた台帳がきっかけで生まれたものです。
何度も転記されているうちに、情報が欠落する場合もあります。
よって公図や地図に地番が抜けているという事態が起こっていたり、情報が不整合になっている場合があります。
登記に不都合があった場合の解決方法
通常、登記の手続き等は、司法書士などに委託して行いますが、上記の問題は、彼らだけでは解決できません。
なぜならば、彼らは手続きは出来ても、登記に関しての権限は無いからです。
登記が困難になる場合の解決策は、法務局の登記官に相談することです。
登記官は、申請主義者です。
これは、市民から申請があれば、法務局はそれに応じなければいけない義務があるからです。
しかし、人によっては親切な登記官もいれば、そうでない人もいるらしいです。
私の周囲でも法務局に頻繁に通っている人もいます。
登記官と顔馴染みになる事で、登記困難の問題を早く解決しようとしています。
以上、簡単に登記についてまとめてみました。
登記はとっつきにくいですが、参考程度でも頭に入れておくと、登記の話題になった時でも話が理解しやすくなります。
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